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2014年5月24日 (土)

ある人

ある人が死んだ。
あんなにも生きようと思っていたのに。

それは、随分前から分かっていたことだった。
分かっていたから、何もできなかった。

励ましたら嘘になるような気がして、
笑ったら悪いことをしているような気がして、
ありがとう何て言ったらさよならになるような気がして、

何もできなかった。


ある日、私は、泣いていた。
メロンパンを齧りながら泣いていた。

「延命治療は、いいよね?」

「うん」

一度流れた涙は、行き場所を探すように、次から次へと流れ出て、
やがては嗚咽を洩らしながら、べそべそと泣いた。

ある夜、最期の頃、
私は相も変わらず、ありがとうと言えずにいた。

それを言ったら、終わりを認めてしまうようで、
死にいく者に対して感謝の意を述べることが白々しいようで、
もしかしたら、天国とか浄土とかそういうのがあって、
そこでまた会えたらという気持ちを裏切りたくなくて、
ありがとうと言えずにいた。

そうこうしてるうちに、
ある人の一生は、終わった。


それから幾年が過ぎた。


漠然とした気持ちが時流に乗って具体化されていく。
あの頃の自分が赤裸々となって今に現れる。
そこに残った、みすぼらしいほどの後悔。


仕方が無いので、私は、それを生きる意味にしようと思った。


人は、哀れと言うかも知れないが、
もし、今というものが、一生を掛けて実現した瞬間ならば、
価値のないことなんて、何ひとつない。

つまり、ここからあそこまで、思い残すことなんて、
何ひとつ無いんだ。

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