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2013年7月26日 (金)

ワンシーン

誰にだって忘れられない日ってもんがあると思う。

それは、何かの記念日とか、誰かの誕生日とか、素敵なことが起こった日とか、
溺愛のペットを飼い始めた日とか、初めて自転車に乗れた日とか、
そういう忘れられない特別な日ってのは多かれ少なかれ誰にだってあるもんだと思う。

僕にとっては、3年前の今日が忘れられない日だったりするので、
今、ビールを飲みながら色々と思い出しているところだ。

思い出というのは不思議だ。

思い返したとき真っ先に浮かぶ場面は、
必ずしもその日をその日たらしめる決定的な場面とは限らない。

むしろ、その日なんとなく過ごした時間、
記録にも残らない、他の人の記憶にも残らないであろう場面が、
今と過去を結び付ける強烈な楔になっていたりするから不思議なのだ。

例えば、3年前の今日、ちょうど午前0時を回った頃、
僕は、むせ返る熱帯夜の中、病院の喫煙所で煙草を吹かしていた。
そのときはジメジメした空気と喧しい虫の声、
隣のベンチに座るおばちゃんはでかい声で電話しててうるさいし、
そのおばちゃんの副流煙が風に乗って流れてくるもんだから、
「時間ずらせばよかったな」と内心辟易していたもんだ。

もちろん、このとき僕はそれなりの事情があって病院に来てた訳だし、
喫煙所で煙草を吸っていたということが何か決定的な要因になる、ということもまるでない。

しかし、その日を思い出すとき、
なぜだかその煩わしい熱帯夜の喫煙所での一場面が真っ先に脳裏に映るのだ。
それも、夏の夜の生温い風もその匂いも、
虫の声も副流煙も、それを照らす蛍光灯も、全てが調和して、
まるで物語のワンシーンのように鮮やかに。

ただ、物語は全てのシーンに意味があるけど、
僕は、もしかしたら人生は無意味なことばっかりなんじゃないかと思っている。
だから、意味ばかりに捉われていたらとても貧しい気持ちになってしまうし、
きっと人を愛せなくなってしまうんじゃないのか……

というような話はまた別の機会にとっておくにしても、
とにかく、今の僕にとっては、あの日あの場所で煙草を吸っていたことは、
まるで物語のワンシーンのようで、
それは何か重大な意味があるんじゃないのかと思ってしまう程だ。

でも、断言して、あと100年経ったって、
その意味とやらが誰かの何かになったり、大それた成果をあげるとは考えずらい。

ただ、僕があの日の喫煙所を思い出すことで、
事実としてのあの日だけでなく、
あの日の「匂い」を思い出すことができるという意味では、
僕の人生にとっての、いや、思い出を物語というのなら、
僕の物語にとって、とても重要なワンシーンに違いない。

そして、大方そういったシーンは、
後から、そこが分岐点だったと気付くことが多い。

あのむせ返る喫煙所で僕はもう時期来るであろう現実を覚悟し、
次の路へ踏み出していたんだと思う。

もちろん、そのときは自覚なんてこれっぽっちもないけど。

あなたは、忘れられないその日を思い出すとき、
どんなワンシーンを思い出しますか?

思い出はきっと、自分の歩むべき道を示してくれるはず。
生温い夏風とともにその背中を押してくれるはず。

「振り返ることは決して後退することじゃないんだよ。」

3年前の僕が煙草を吹かしながら、
分かったような顔してそんなことを、言った。

というのは、後付けです。

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